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映画「わたしのかあさん -天使の詩― 」

2024-03-28

映画「わたしのかあさん -天使の詩- 」 を観て・・・

コスモス研究所 中村清隆

 

 監督は92歳の山田火砂子さんです。映画が完成し、関西で最初の上映会で見てきました。映画は年に1~2回しか見ない映画好きでもない私が、あえて上映会に出向いたのは、知的障害のある母の子育てとその娘の育ちに興味があったからです。

 山田監督の長女も知的障害があり、長女の養護学校の教師であった菊池澄子さんの絵本「わたしの母さん」を原作にしています。

山川高子は障害児入所施設の園長としてすごしています。ある日、親友の優子が訪ねてきて高子に母・清子のことを本にしないかと声をかけます。母・清子と父には知的障害がありました。今でこそ障害のある子や人と共にすごす高子ですが、かつては両親に知的障害があることを恥じて苦しむ日々がありました。

 小学3年生の高子の日々が回想されます。

 母と父に障害があることを知りだした高子は、受け入れることができず抵抗します。祖母から、清子が2歳の時にはしかに罹り知的障害が発症したこと、清子は明るく誰をも分け隔てしない子として育ってきたことを知ります。父も幼児期に事故で頭を打ったことが発症原因であったことを知り、誰にも障害をもつことがありえると理解していきます。

 1日の家計として千円札2枚ずつ封筒に入れ、日めくりカレンダーに貼り付けて日々のやりくりを営む姿、楽しい家庭にしようとねがう姿、誰にも優しい母の姿に、高子は母を受け入れていきます。

「わたしの母さんは、知的障害者でしたが、私にとって最高の母でした。」と、子どものころをふり返って語ります。

 

原作では小学4年生ですが、映画では3年生の設定にしています。

「9~10歳の発達」として注目される小学3年生から4年生の時期には、抽象的概念を理解し始めます。「障害」という概念の理解に立ち向かい、障害の「ある―ない」で分け隔てするのでなく、誰にでも起こりえる繋がったものとして高子はとらえていきます。そして、人の「かしこさ」は、その人の持っている力がいろんなところで発揮できることと理解していきます。

そうしたことを前面に押しだすのではなく、さらりと理解させてくれる映画です。

むしろ、笑いと涙から登場人物の心や感情がそのまま自分の中に入ってくるような映画でした。前の席で見ている人たちも、私と同じように身を震わせて感動の涙をしていることが分かりました。

近くで上映されるときは、ぜひ見ていただきたい作品です。